以下のニュースを見て、考えさせられました。
- 居酒屋「土風炉」を運営するラムラに対し社員の料理長がストライキを通告した。料理長側によると料理長は基礎疾患があり、感染した場合重症化するリスクがあることから4月8日、会社側に怖くて働けないと休業を申し入れた。しかし、会社側は聞き入れなかったという。料理長側によるときょうも出社命令が出ていて、休業を認めてもらうまで無期限でストライキを続けるという。土風炉を運営するラムラは「お客様、並びに従業員に対し感染の危機を最大限小さくするための万全の措置、努力に努めている」としたうえで「現場調理スタッフについての自宅待機を前提とする事業運営は不可能であり、要求は受け入れられるものではないこと、ご理解いただけるものと存じます」とコメントしている。
おそらく、どちらも同じ内容のものだと思います。
料理長は基礎疾患があるので、怖くて働けない。お子さんも障害を抱えており、料理長にもしものことがあれば、奥さんが一人で育てていく必要があります。料理長の立場で考えると休業を申し入れる気持ちは理解できます。
しかし、企業側にすれば休業を受け入れてしまうと売り上げが、なくなるのに固定費だけは支払わないといけません。新型コロナが終息するのがいつになるのかもわかりません。売り上げがない状態で何か月も固定費だけ払い続けていけば経営破綻です。
同じような内容が他にもありました。
労働組合ジャパンユニオン?
ジャパンユニオンに加入している人が訴えているようです。
ジャパンユニオンというのを初めて知ったのですが、1人でも加入できる労働組合なんですね。
全国どこでも 1人からでも入れる労働組合です。
料理長の訴えの詳細は?
ニュース報道だけだと詳細がよくわからないので、調べてみると状況が見えてきました。
- 40歳代から2型糖尿病を患い、現在まで通院治療を続けています。今年の4月に入り新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出された4月8日以降は、基礎疾患を抱え感染リスクが他の労働者より極めて高いため、会社に対し休業・自宅待機を何度も求めてきました。しかし、会社は賃金の一部支払いはしてきたものの、休業・自宅待機は一切認めませんでした。
- Nさんは、自らのそして家族のいのちを守るため、やむなく休業・自宅待機を継続。しかし、6月いっぱいで有給休暇も使い果たし、7月から完全な欠勤状態に。会社からは出勤命令が頻繁に下されたため、7月29日に団体交渉を開催し、厨房内での感染リスクの高さ(3密、客が使用した飛沫が残る食器を洗浄中にしぶきが目に入るなど)や、いつ感染するかと不安を抱えながらの生活状況を切々と訴え、重ねて休業・自宅待機を求めましたが、8月3日の書面での回答は、同月5日付の新店舗配属命令でした。
- このまま欠勤状態が続けば、早晩会社より懲戒処分が出されるのは必至であり、雇用の確保も危うくなるとの判断で、Nさんは意を決し、合法的に堂々と休業・自宅待機を実現できる、団体行動権の行使たるストライキという選択肢を採るに至りました。
- 新店舗配属初日の8月5日午前中、同日始業時をもってストライキに無期限で突入する旨の通告書をファックスで会社に送信。ラムラとは争議状態に入りました。今後は、ストライキ決行前の休業・自宅待機期間中の賃金補償を含め同社と団体交渉を重ねてゆくことになります。
【出典】賃金払って休ませろ! 「土風炉」「鳥元」のラムラにストライキ通告・本社に申し入れ行動 - ブログNPO法人労働組合作ろう!入ろう!相談センター
双方にメリットはない。
厚生労働省は5月、経済団体などに感染対策を求める中で、妊婦や高齢者、糖尿病などの基礎疾患がある人への「労務管理上の配慮」を要請しているということですが、そうすると安全面の配慮を理由に、職場異動を行うことになると思うんですね。
実際、8月3日に新店舗配属命令が出されています。従業員は人事に対しては基本的に従うしかありません。現在は東京勤務ですが、感染者の多い東京から少ない地域の店舗への異動ということも「労務管理上の配慮」と言えるかもしれません。
不特定多数の方と接触する機会が多い人に対して、新型コロナウイルスの感染を完全に防止することはできません。
感染者と直接接する病院では、かなりの対策を取り、最新の注意を払って医療業務を行っているはずです。それでも院内感染するのですから、飲食店などで対策を行うといっても病院を超える対策はできないはずです。
となると、基礎疾患がある人を不特定多数の人と接触する可能性がある職場で働いてもらうわけにはいかなくなります。
経営状況的に労働力にならない人を雇い続ける余裕がなければ休業という扱いも難しいはずです。そうすると、必然的に現在の職から離れてもらって人と接触する可能性がない業務について頂くことになります。
これは、個人にとっても、企業・店舗にとっても好ましいことではありません。
休業は無理、異動も双方にメリットはありません。
更に企業側は、お客様並びに従業員に対し感染の危機を最大限小さくするための万全の措置・努力に努めているというので、これが「労務管理上の配慮」ということにもなるかと思います。
そうすると、どうしても今の環境では働けないということになると退職するしかなくなるんですよね。これは料理長も理解しているようで、ストライキという手段を労働組合の指示で選択したのでしょう。
料理長の言い分はよく理解できるのですが、企業もこのような事例を認めると他にも同じような訴えを行う人が増えてくることが予想されます。
料理長の基礎疾患は糖尿病だということなので、他にも同じ基礎疾患を持っている人はいるのではないでしょうか?
命は大切です。
しかし、企業も生きているんです。経営を継続しないと他の従業員、仕事を受けている他の会社に対して影響が出ます。最悪の場合は経営破綻となり企業の命が失われることになります。
今の時代、企業、従業員双方が歩み寄らないと共倒れということにもなりかねません。