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もっと早く教えてくれよって思った内容を書いていきたいと思います。

芸能人は、なぜ、週刊誌にスキャンダル記事を書かれても訴えないのか?

週刊誌のスキャンダル記事は罪にならない? 

週刊誌というと、有名人の「スキャンダル記事」というイメージがあります。

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取材を行っての記事に関しては特に問題はないと思うのですが、スキャンダル写真となると当然、事前に確認を取って撮影しているわけではなく事後になります。

これって同意なく撮影してしまっているわけなので、肖像権(プライバシー)の侵害、盗撮といった行為にはならないのでしょうか? 思った通り、過去に裁判になり出版社側が敗訴したことがありました。

2016年7月27日、自宅療養中だった歌手・中森明菜(51)の隠し撮り写真を掲載した週刊誌『女性セブン』(小学館)に対し、中森がプライバシーの侵害に当たるとして計2200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。東京地裁は「芸能人であることが自宅で過ごす姿をのぞき見られることの違法性を軽減する理由にはならない」と判断し、同社とフリーカメラマンに計550万円の支払いを命じる判決が下された。

dot.asahi.com

盗撮という罪はない

しかし、スクープ写真が掲載されると必ず裁判になるということはありませんし、むしろ裁判にならないことの方が圧倒的に多いように思います。

おそらく、裁判にすれば上記の例と同じように罪に問えるような気がします。

盗撮というといかにも犯罪の匂いがしますが、「盗撮罪」というような犯罪があるわけではありません。

もちろん、態様によって犯罪になる場合があり、各都道府県の迷惑防止条例違反に当たる場合と軽犯罪法の「のぞき見罪」になる場合が考えられます。

迷惑防止条例都道府県毎に内容が若干異なりますが、公共の場所や乗物にいる人の下着や身体を撮影することが禁止されているほか、通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる公衆の場所(たとえば、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用できる更衣室など)での撮影を禁止しているところもあります。

迷惑防止条例違反の場合は、都道府県毎に異なりますが、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっていたり、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金などとされることが多いようです。

lmedia.jp

上記によると、「盗撮罪」というものは存在しないので、罪を問う場合には、都道府県の迷惑防止条例、のぞき見罪に該当するかどうか?ということになります。週刊誌で撮影しているのは公道であり、更に下着姿や身体を撮影しているわけではないので違法行為とまではいえないようです。

しかし、プライバシー・肖像権の侵害、名誉棄損という点ではどうでしょうか?いずれも該当する場合もあるかと思いますが、撮られた側が告訴しないと成立しないわけです。裁判になれば長引きますし、仮に勝訴したとしても、損害賠償の額は数十万円~数百万円だということです。この程度の損害賠償で長く引きずるより泣き寝入りして鎮静化するのを待つ方が撮られた側も得策と考える場合が多いのでしょう。

名誉棄損は事実であって成立する

名誉棄損ですが、真実であっても公にすることで名誉棄損罪が成立するということです。しかし、政治家や公務員の場合には変わってきます。

第二百三十条 

  • 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
  • 2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。(公共の利害に関する場合の特例)

第二百三十条の二 

  • 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
  • 2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
  • 3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。(侮辱)

【出典】e-Gov法令検索

政治家の場合、事実なら名誉棄損が成立しない

政治家と公務員は、第二百三十条の二 の3項に該当します。

「事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」

とあります。

つまり事実であれば名誉棄損に該当しないということです。

 

ダレノガレ明美さんのフェイクニュースのように事実とは異なる報道され心情的に耐えられないという場合は別ですが、内容に嘘がなければ撮られた側には何のメリットもありません。

そして出版社側の立場だと数百万の金額のリスクを払ってもスクープを記事にした方が利益になるでしょうし、裁判になればまた、話題になりますから、2度おいしい記事になります。告訴してくれた方が良いのかもしれません。

そう考えると、有名人の名前や写真を使って週刊誌を売ろうとしているのですから、今度は、パブリシティ権の侵害という点が気になります。

パブリシティ権とは

  • 商品の販売等を促進するといった顧客吸引力を持つ著名人の氏名や肖像について、著名人の人格的利益から排他的に利用出来る権利

しかし週刊誌の写真は、多くても数枚ですから数枚の写真で、顧客誘引力の利用を目的には当たらないと判断されるかもしれませんし、何より顧客誘引力を持つ肖像が主ではなく、行為に対するものなので、パブリシティ権を侵害しているとは言えないのではないでしょうか?

過去にパブリシティ権の侵害ということで、訴訟を提起しましたが、棄却されています。

内容

  • 被控訴人㈱光文社は、その出版にかかる週刊誌『女性自身』(平成19年2月27日号)中で「『ピンク・レディー』ダイエット」の見出しのもと、原告らの写真14枚(本件写真)を、原告ら以外の写真、記事と共に掲載しました。これに対して控訴人らは、被控訴人に対し、本件写真の掲載は、控訴人らが自己の肖像につき有するパブリシティ権の侵害であるとして、平成19年に損害賠償の支払いを求めて、東京地方裁判所に訴訟を提起しました。東京地方裁判所は、平成20年7月4日に判決を言い渡し、控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らが知財高裁に控訴しました。

判決 

  • 本件写真(14枚)の週刊誌中での掲載については、肖像のグラビアやカレンダーにおける使用の場合のように、肖像の顧客吸引力をそのまま使用するというものではなく、本件記事の趣旨からすると、控訴人らの写真が、ダイエットをテーマとする本件記事の中心となっておらず、使用の甘受の範囲を超えているとは認められないとして、控訴人らが自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利、すなわちパブリシティ権が害されているとはいえないと結論づけました。

【出典】JIII知的財産権判決速報

週刊誌のスキャンダル記事でも同じように判断されるでしょうから、週刊誌のスキャンダル記事で、パブリシティ権の侵害だと訴訟を起こすことをしないのでしょう。

結局、有名人にも色々な権利がありますが、有名であるがゆえに、行使できないということになるのかと思います。

 

スクープのたまご

スクープのたまご

  • 作者:梢, 大崎
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: 単行本