森友学園めぐる文書改ざん 自殺した職員の遺族が提訴
森友学園をめぐる、財務省の決済文書の改竄に関与させられたことを苦に自殺した近畿財務局の職員だった妻が、2020年3月18日に国と改ざんを事実上指示したとされる元財務省理財局長に1億1000万円余りの損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしましたという報道がされました。
森友学園問題とは?
まずは、森友学園問題とは、どのような事なのかを振り返ってみたいと思います。
発端は、2017年2月9日に朝日新聞が報じた以下の記事になります。
財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。国有地の売却は透明性の観点から「原則公表」とされており、地元市議は8日、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。
森友学園が買った土地には、今春に同学園が運営する小学校が開校する予定。籠池理事長は憲法改正を求めている日本会議大阪の役員で、ホームページによると、同校は「日本初で唯一の神道の小学校」とし、教育理念に「日本人としての礼節を尊び、愛国心と誇りを育てる」と掲げている。同校の名誉校長は安倍晋三首相の妻・昭恵氏。
大きく3つの問題があります
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2016年6月、学校法人「森友学園」に大阪府豊中市の国有地が払い下げられました。不動産鑑定士が出した土地の評価額は9億5600万円でしたが、近畿財務局が出した払い下げ価格は「約8億円引き」の1億3400万円という破格の価格でした。
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森友学園の籠池泰典理事長(当時)が近畿財務局との交渉時に安倍総理の夫人である昭恵さんとの交流を強調していたことなども判明し、安倍首相夫妻の影響で土地の価格が不当に安くなったのではないかとの見方が出ています。
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財務省が国有地払い下げの経緯を記した文書を国会に提出した際、安倍首相や昭恵夫人の関与が疑われかねない部分の記述を削除していました。公文書の改ざんを行っていたことが明らかになりました。
その後、国会でも色々と討議されましたが、2つの市民団体が告発状を提出しています。
まずは、市民団体「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」です。
2017年10月16日
【告発状】
2017年11月23日
- 森友学園をめぐる疑惑の中心人物の一人を新たに告発
国有地については、時価評価額からごみの撤去費用の名目で、およそ8億円が差し引かれ、売買代金がおよそ1億3,400万円とされていた。
市民団体は、「工事に支障がないごみの撤去費用を高く見積もり、土地を不当に安く売却し、国に8億円以上の損害を与えた」と主張、契約を担当した美並義人近畿財務局長を背任の疑いで告発した。
【告発状】
2018年5月31日
- 決裁文書を改竄したとする虚偽公文書作成罪などで告発を受け、捜査対象としていた佐川氏ら38人全員を不起訴処分とし、一連の問題が発覚した昨年2月から約1年3カ月にわたった捜査を終結させていた。
2018年6月4日
2019年3月29日
- 大阪検察審査会は、公用文書等毀棄罪に関して、佐川元局長らに対して不起訴不当議決、虚偽有印公文書作成及び行使に対して不起訴相当議決を出しました。
【出典】森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会
市民団体「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」が東京地検に佐川宣寿前長官ら24人への告発状を提出しました。
以下は、その経緯です。
2018年4月9日
- 森友学園に対する国有地売却に関して、近畿財務局及び財務省が、面談や交渉の記録書類14点について300箇所もの改ざんを行い、それを国会や会計検査院などに提出していたということで、公用文書等毀棄罪、虚偽有印公文書作成及び行使容疑で東京地検に佐川宣寿前長官ら24人への告発状を提出しました。告発状の内容は以下の通りです。
【告発状】
2018年5月31日
2018年6月13日
- 大阪検察審査会に申立てを行う。
2019年3月29日
- 大阪検察審査会は、公用文書等毀棄罪に関して、佐川元局長らに対して不起訴不当議決、虚偽有印公文書作成及び行使に対して不起訴相当議決を出しました。
【出典】健全な法治国家のために声をあげる市民の会
不起訴とした理由が開示されないので、告発した側にすると納得できるものではありません。検察審査会へ申し立てを行っても同じ結果というのも疑問を感じます。
検察審査会については以前に以下の記事を書いています。
森友学園問題の結末
籠池元理事長と、その夫人が国の補助金など計約1億7千万円をだまし取ったとして詐欺罪で、大阪地検特捜部が起訴し、2017年07月30日に逮捕されました。
起訴の内容は以下の通りです。
- 両被告は2016年2月、森友学園が大阪府豊中市の国有地に小学校を建設するため、金額を水増しした虚偽の契約書を提出するなどして国の補助金約5600万円を詐取。運営する幼稚園でも2011~2016年度、病気や障害のある園児に特別な支援をしたと偽るなどして大阪府と大阪市の補助金計約1億2千万円をだまし取った。
- 検察側は、国の補助金申請は両被告が主導し、虚偽の契約書を校舎の設計業者に作成させたと指摘。府と市の補助金については、諄子被告は学園の経理業務を統括しており、詐欺の認識があったのは明らかだなどと主張していた。
【出典】朝日新聞デジタル
具体的な容疑は以下になります。
- 小学校建設の工事費のうち木材を生かした建築物を対象にする国の補助金を不正受給していた。建設業者とは15億円で契約していたにも関わらず、国には約23億円として提出したというもの(約5600万円)
- 専任教員の数などに応じて支給される大阪府の補助金を不正受給(約6180万円)
そして、2020年2月19日に大阪地方裁判所で以下の判決が言い渡されました。
森友学園の今
森友学園が設立を目指していた「瑞穂の国記念小学院」は建設工事途中のまま、建物の所有権を主張する建設会社と土地を所有する国との間でにらみ合いの状態です。
森友学園が、小学校設置の認可申請を取り消したことで建設工事は中断、更に民事再生を申請したことで、建設会社には工事費用の支払いが一部しか支払われず建物の所有権を主張し建物の管理は現在、建設会社が行っています。一方、土地を買い戻した国は土地を更地にして返還するように破産管財人に対して要求しています。更地にするための費用は10億円程度とされています。
2019年12月に建設会社は国などに土地と建物の一体売却を求めた調停を大阪簡易裁判所に申し立てています。
そして森友学園民事再生申請により、債権者集会が2017年12月20日に大阪地裁で開かれ、債務約28億円のうち97%の支払い免除を求める再生計画案が賛成多数で可決されています。再生計画案によると、学園が運営する塚本幼稚園の園児数を債務の弁済開始までの3年間で約90人増やして155人とし、園の収益で10年かけて免除された残りの約8600万円を弁済することになりました。
- 藤原工業 1,625,679,683円 → 48,964千円
- 大阪府 76,856,580円 → 2,499千円
- 国 994,177,152円 → 30,019千円
- りそな銀行 152,615,536円 → 4,722千円
- 合計 2,849,328,951円
上記債権額の3%の額は、以下の額になります。
※管財人(疋田淳 弁護士)
そして、立花孝志さんが、現在の債権額の残額である約8,400万円を現在の森友学園の理事長の個人の口座に振り込んだそうです。
しかし、藤原工業側は、再生計画のやり直しになるからといったことを理由に受け取りを拒否しているそうです。
【出典】立花孝志(Youtubeチャンネル)
上記は債権者10者の内の4者だけの額のようです。
これに大阪市他5者が含まれることになり、総額で約28.8億円になります。
- 大阪市 3,960,000円
2017年12月22日に大阪地方裁判所は再生計画を認可しています。
藤原工業ですが、16億以上の債権額の3%でなぜ合意したのでしょうか?
ホームページを見ると、資本金は3,000万円で従業員が18人の会社です。
この規模の会社で債権額16億円の97%が支払ってもらえなければ、普通に考えれば資金繰りができずに連鎖倒産になっても不思議ではないと思うんですね。
完工高というのがホームページに掲載されていますが、以下の内容になります。
完工高
- 平成28年度 25億6,000万円
- 平成29年度 29億1,000万円
- 平成30年度予想 30億円
30億円の程度の完工高で15億円以上の負債が生じ、なぜ経営に影響がないのでしょうか?
そして、この規模の会社で、関西圏の教育施設の工事をかなり請け負っているようです。新築・新営工事だけでも以下の施設を請け負ってます。
【出典】
森友学園の小学院の工事にしても、どうして藤原工業に決まったのでしょうか?
藤原工業には疑問ばかりが生じます。
ここまでが森友問題の振り返りになります。
この問題は、複雑で長くなりそうなので、何回かに分けて書きたいと思います。