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もっと早く教えてくれよって思った内容を書いていきたいと思います。

東京高等検察庁 検事長の定年延長について

政府が黒川弘務・東京高検検事長の定年を半年間延長すると決めたことで国会では野党議員が問題にしようと躍起になっています。

国会での質疑は同じことを何度も繰り返す場面が多く、このため速記を止める場面も少なくありません。このように無駄な時間が長くて話の流れが見えにくいですし、マスコミは、特徴的な発言だけを取り上げて本質については報道してくれません。

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結局、自分で調べることにしました。

今回、議論となっているのは「政権の守護神」と一部の方から呼ばれている、東京高等検察庁 黒川検事長が2020年2月8日で定年を迎えるはずでしたが、直前の1月31日に検察官では初めての定年延長の閣議決定がされたことです。

検察官の定年は検事総長を除き、63歳です。(検事総長は65歳)国家公務員一般職の定年が60歳で、検察官は特別扱いされているはずなのに更に延長というのはどうかと思います。

野党が問題視してるのは、その点ではなく別です。

森友学園」「桜を見る会」など安倍政権にとって不都合な事実が多く出てきていますが多くの関係者が不起訴となっています。

これらは黒川検事長の存在があったからではないか?定年で辞めてしまうと、安部政権の守護神がいなくなり困るので、定年を延長して検事総長にしようとしているのではないか?という点を野党は問題視しているのです。

そして、どのような経緯で今に至っているのか?ということが知りたかったのですが、なかなか、まとめられた内容が見つかりませんでした。そんな中、2020年2月26日衆議院予算委員会で、立憲民主党枝野幸男代表がフリップを作って説明をしてくれていました。

検察官勤務延長をめぐる経緯

  • 2020年1月31日 定年延長の閣議決定
  • 2020年2月03日 森法務大臣と渡辺(周)議員が質疑
  • 2020年2月10日 森法務大臣と山尾議員が質疑
  • 2020年2月12日 松尾人事院給与局長が後藤(祐)議員の質問に対し「人事院としては、現在までも、特にそれについて議論はなく、同じ解釈」と答弁
  • 2020年2月13日 本会議で総理が解釈を変更した旨答弁
  • 2020年2月19日 松尾局長が山尾氏の質問に対し、「現在という言葉の使い方が不正確だった」等と答弁変更
  • 2020年2月20日 日付のない文書が理事会に提出される。松尾局長が小川(淳)議員の質問に対し決済は取っていないと答弁。森法務大臣は館内で必要な決済を取っていると答弁
  • 2020年2月21日 理事会に日付を事後追加した文書が提出され口頭決裁と説明

定年延長はなぜ必要だったのか?

黒川検事長については検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、法務大臣である私から閣議請議を行って閣議決定され、引き続き勤務させることとしたものでございます。

定年延長をしなければいけないような業務とは?

東京高検検察庁の管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するため黒川検事長の検察官としての豊富な経験知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が不可欠とあるというふうに判断したため、当分の間、引き続き東京高検検察庁検事長の職務を遂行させる必要があるため引き続き兼務させることとしたことでございます。これ以上の詳細については個別の人事に関することである上、捜索間の活動やその体制に関わる事柄でもあることからお答えを差し控えさせて頂きます。

不自然な人事であるという事は当たらないと思います。法令に基づく人事を行っております。過去については、検察官についてはございませんが、これは一般の国家公務員に当たりますので国家公務員法による勤務延長は過去にも前例はございます。

※具体的な業務については森法務大臣は述べていませんが、保釈中に逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の事件捜査のようです。

検察庁法では定年は63歳と定められていますが?

検察庁法は国家公務員法の特別法に当たります。そして特別法に書いていないことは一般法である国家公務員法で、そちらが適用されることになります。検察庁法の22条を今、お示しになりましたが、そちらには定年の年齢は書いてございますけれども、勤務延長の規定について特別な規定は記載されておりません。そして、この検察庁法と国会公務員法との関係が検察庁法32の2に書いてございまして、そこには22条が特別だと書いてございまして、そうしますと勤務延長については国家公務員法が適用されることになります。

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国家公務員法で定められている勤務延長は検察官は含まれないのでは?

2020年2月10日に立憲民主党の山尾議員と森法務大臣で以下のような質疑が行われました。

国家公務員法には国家公務員の定年に関する条文と延長に関する条文があります。そして延長に関する条文で「前項第一項の規定により」と書かれている点を指摘しました。

前項第一項というのは国家公務員の定年に関する条文のことです。

そして、森法務大臣は、検察官の定年年齢に関しては検察庁法で定められていると言われたことから、検察官は、国家公務員法で定められている定年の条項には該当しないことになるので、定年延長についても該当しないのでは?ということです。

これに対し、森法務大臣は、以下のように答えています。

  • 検察庁法二十二条には定年制を定める旨、そして定年の年齢と退職時期の2点について特例として定めたと理解をしております。そして、三十二条の二だったかと思いますが条文のちょっと、数字間違っていたら申訳ございませんが、そちらの方にですね、国家公務員法検察庁法の関係が書いてあるんですけれども、そちらの方にもしですね、勤務延長を規定しないということであるならば、こちらの方に記載がされるべきだと思いますが、記載がされていないこと、そして検察官が一般職の国家公務員であることから特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解しております。

以下、上記の質疑で出てきた条文です。

国家公務員法

十三条 

  • 一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない。

第八十一条の二 

  • 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。

第八十一条の三 

  • 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。

検察庁

第二十二条 

  • 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。

第三十二条の二 

  • この法律第十五条、第十八条乃至第二十条及び第二十二条乃至第二十五条の規定は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)附則第十三条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。

【出典】e-Gov法令検索

この回答に対し、山尾議員が国家公務員法を改正した時の衆議院内閣委員会議事録(昭和56年2月28日)で質疑がされていたということを示しました。

当時の神田委員が検事総長、その他の検察官等にも定年制が適用されるのか?という質問を行っています。

その回答は以下になります。

  • 検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになつておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。

野党はこの議事録から検察官については定年・勤務延長の対象外だとしていますが、森法務大臣は、条文の解釈によるものだと譲りません。

人事院を呼んでみよう

2020年2月12日の予算委員会で、野党が人事院の松尾 恵美子給与局長を呼びました。

当然、確認したいことは、昭和56年4月28日の検察官の定年延長に関する人事院の答弁、検察官は定年の延長を含めて定年制度を適用しない。この考えに今も変更がないか?という点です。

給与局長の回答は以下の通りです。

  • 人事院と致しましては国家公務員法に定年制を導入した際は、議員ご指摘の昭和56年4月28日の答弁の通り、検察官については国家公務員法の定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと認識しております。他方、検察官も一般職の国家公務員でございますので、検察庁法に定められている特例以外につきましては一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます。従いまして国家公務員法検察庁法の適用関係につきましては検察庁法に定められている特例の解釈これに関わる事でございますので、法務省において判断されるべきものと考えておるところでございます。

どっち、つかずの差しさわりのない回答でした。

ちなみに、この日の回答で、辻本議員の罵声とも思える質問に対して、安倍総理が「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばしたことが問題になっています。

そして、次の日(2020年2月13日)、安倍総理衆議院本会議で、国家公務員法に定める延長規定が検察官には「適用されない」とした政府の従来解釈の存在を認めたうえで、安倍内閣として解釈を変更したことを明言しています。

どのような社会情勢の変化があって勤務延長が必要になったのか?

立憲民主党からの追及は更に続きます。2019年3月9日小西議員より、2019年11月の段階では、検察官の勤務延長について法案には含まれていませんでしたが、2019年1月になって急に法案に盛り込まれた背景にどのような社会情勢の変化があったのかを質問しました。

この質問に対する森法務大臣の答えは以下の通りです。

  • 例えば、東日本大震災の時、検察官が福島県いわき市から、市民が避難していない中で最初に逃げ出した。
  • 国際間を含めた交通事情は飛躍的に進歩し、ヒトやモノの移動は容易になっている上、インターネットの普及に伴い、捜査についても様々な多様化、複雑化していることを申し上げたい。

これが検察が一番に逃げたした。10人いた勾留中の者を理由なく保釈した森法務大臣が総理にまで注意され撤回させられた発言です。

しかし、これだけ何を言いたいのだろう?って感じです。

この内容について森法務大臣が更に以下のように説明しています。

  • 自然災害が近年、頻発をしているという例であげました。今回ですね、解釈変更をして勤務延長する場合に人事院が示した規則の中に3つの例がございますけれども、離島等に居る場合というのが、一つの例として定められていたと思いますけれども、このようにですね、大規模な災害がある時に大変、混乱をしていたんだと思いますけれども、そういう時にですね果たして、地方の場合は人数が少ない訳でございますけども、その時にですね、勤務延長を1日たりとも、どんな場合でもしないということがあり得るのかという風に私はその当時も思ったわけでございますけれどもそういった例として一つ上げさせていただきました。

もう一つは、最初に述べられていた「複雑困難な事件」ということに対することかと思います。

憶測になりますが、自然災害が頻繁に発生するので、今までの規則では対応できない状況があり得るということ、犯罪も進歩した交通事情やインターネットにより複雑化している環境というのが変化だと言いたかったのでしょうね。

内閣による解釈変更

山尾議員が示した議事録の内容を含めて、今回の定年延長を決議したのかの経緯を記録した文書がまた、ありません。メモ書きは残っていると提出されましたが日付などがなく、後からでも作成できるようなものでした。電子記録の履歴を示すログも提出されていないので、内閣が過去の記録も調べずに勝手に解釈変更をして決議したという見方が強くなっています。

個人的には、どちらにも受け取れますので条文に問題があるという感じです。法務省も今回の定年延長を決めるに際して色々と調べたはずです。その結果、検察管の定年延長について不明確だったので法案として追加したのだと思います。

この件と、安部政権との利害関係があるのかというと何とも言えませんが検査官の定年延長について明確な答えがないのも確かなので条文化する必要はあります。

そして、2020年3月13日 国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる国家公務員法検察庁法などの改正案を閣議決定したとの報道がありました。

www.asahi.com

今回の黒川検事長の定年延長の件が終わっていない状態で、すんなりと成立するとは思えません。

色々と調べてみたことで、国会の質疑というのは実に無駄な時間を費やしているように感じました。そして、1個人の定年に関して1ヵ月以上も質疑を続けるようなことは、そろそろ卒業して頂きたいですね。