新しい1万円札の顔になる、日本資本主義の父である、渋沢栄一を描いた、NHKの大河ドラマ「青天を衝(つ)け」が早くも注目され書店には渋沢栄一に関する著作や書籍コーナーが設けられている書店もあります。
渋沢栄一というと、約700もの企業に関わり、約300の社会公共事業にも関わっている凄い人です。
渋沢栄一記念財団のホームページに変遷図一覧が掲載されています。
交通関係では日本航空運送、JR東日本の前身である日本鉄道、日本郵船、金融系だと、日本銀行、三井銀行、東京海上保険、製造系では王子製紙、東洋紡績、日本板硝子、日本鋼管、川崎造船所、エネルギー系では東京ガス、東京電力と多岐に渡ります。社会事業についても、日本赤十字、東京大学、日本放送協会などに関われています。
大河ドラマは2021年1月から放送となりますので、起業や投資に興味を持たれる方が増えるのではないかと思います。
老後は2,000万円の貯えが必要だと言われたこともあり、今から何かしないといけないと考えられている方は少なくないかと思います。
このような背景からか、三戸政和さんが書いた「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」がベストセラーとなり今も売れているようです。

サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)
- 作者: 三戸政和
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/04/20
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る
300万円で買えるような会社ということは倒産寸前で現金が少しでも欲しいからでは?と僕は考えていました。しかし、著書によると約380万社ある日本の中小企業の内、約100万社は後継者を求めていて、その多くは社長が高齢化で事業承継に悩んでいるというのです。その中には確かに先行きの暗い会社もありますが、黒字なのに後継者が見つからず廃業する会社も多いそうです。
サラリーマンを辞めて手軽にできるイメージの起業というと、飲食店です。
しかし、飲食業界の競争は激しいです。
特に人口の多い東京は競争も激しいですし、ライバルとなる他店のオーナーも儲けることにどん欲な人が多いので、生半可な気持ちで、ゼロから始めても直ぐに閉店に追い込まれることでしょう。
長年続けてきた店(会社)を買い取ることは、離陸して軌道に乗って自動操縦で飛行している操縦席を譲ってもらうようなものですから、ゼロから始めるより遥かにリスクは小さくなります。
そして自分がサラリーマンとして勤めていた会社に関わる知識や人脈が活用できるような業界であれば、経営に活かすことができます。
では、会社を買うにはどうすれば良いのでしょうか?
著書によると、今は中小企業を専門とするM&A(買収・合併)仲介会社が多数存在します。そして会社を売りたいという情報は求人情報を探すかのようにインターネットで簡単に手に入る時代になっています。
この業界の最大手の「バトンズ」が運営している、「Batonz」が有名です。
他には、小売り・製造業・サービス業と多岐に渡る売り案件が探せる株式会社トランビが運営している「TRANBI」も有名です。
買収額は、数百万円のものから、億を越えるものもあります。
買収額の設定は、会社の純資産額+営業利益3年~5年分が目安ということです。
買収したい会社を選ぶポイントですが、自分が現在、仕事で関わっている業界というのは知識もあるでしょうが、著者は、「自分の好きなこと」が基本だと言います。
しかし、会社を選ぶ時にもう一つ、心配なことがあります。
会社の経営状態です。
会社が申告している内容通りの経営状態なのかを調べるには会計知識がどうしても必要になってきます。で、この著者、会社の経営状態を判断するための情報や方法を解説した続編を書いています。(笑)
それが、「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編」です。

サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編 (講談社+α新書)
- 作者: 三戸政和
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/02/22
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る
ここまで、読んで興味を持たれた方は、上記の著書を読んで頂くのがよいと思いますが、それだと単なる書籍の紹介で終わってしまいます。
この本を書いた人がどんな人なのかを調べてみました。
株式会社日本創生投資 代表取締役社長。1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先にてM&A、株式上場などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選
【引用元】
株式会社日本創生投資という会社は初めて知りました。
かか
【参照元】
中小企業向けの事業承継・事業再生投資を専門とする会社です。まさに著書に書かれている内容を実際に行っている会社のようですね。
そして、三戸さんはこれまで色々な起業家を見てきたなかで、ゼロイチ起業は選ばれた人のものだと言われています。これは、「向き・不向き」があるからです。だから成功できるのは選ばれた一握りの人だけです。そんな三戸さんが認めるゼロイチ起業家はホリエモンこと堀江貴文さんです。
堀江さんは大学時代に、インターネットに出会って衝撃を受け、オン・ザ・エッジという会社を立ち上げます。その後、今のライブドアへと進化を遂げ事業規模を急激に拡大していきテレビ局・球団の買収と勢いに乗りましたが、ライブドア事件と呼ばれた、有価証券報告書に虚偽の内容を掲載した、粉飾決算だということで証券取引法違反で逮捕されます。出所後、ゼロからまた色々な事業に進出したりと活躍中しているまさにゼロイチ起業家だと言えます。逆に向いていない人の代表がソフトバンクの孫正義さんだそうです。孫さんはゼロからイチをつくりだすのではなく、既存の会社を買収して事業を作るのが得意な方だからです。
つまり、起業家を目指すのであれば、堀江さん、三戸さんの言われるゼロイチではなく、会社を買収するタイプを目指すのであれば孫さんがお手本ということになります。
会社を買うのは良いのですが、本当に買収するだけの価値があるのかどうかを調査するためには、知識と経験が必要なはずです。サラリーマン時代に経営者の視点で仕事をするのと、只、日々のノルマや目標を達成するだけのサラリーマンの視点で仕事をするのとでは10年後には大きく違ってくるはずです。堀江さんのような起業家を目指すにしても、孫さんのような投資家を目指すにしてもサラリーマンの視点では、どちらも無理です。上場した会社であればIR(インベスター・リレーションズ)情報つまり経営状況・財務状況がわかる情報を公開していますので、沢山の会社のIR情報を分析することでも経験は積めるはずです。もし脱サラを考えるのであれば、会社の良し悪しを客観的に見抜ける目を養うことが重要だということです。