天皇陛下が即位したときなどには、恩赦といって刑務所に入っている人が出られるという話を子供の頃に聞いていました。
そして、2019年10月18日に法務省から以下のような発表がありました。
令和元年10月18日,「復権令」及び「即位の礼に当たり行う特別恩赦基準」が閣議決定されましたので,お知らせします。
趣旨
- 新しい令和の時代を迎え,即位の礼が行われます。この慶事に当たり,罪を犯した者の改善更生の意欲を高めさせ,その社会復帰を促進するという刑事政策的な見地から,今般,恩赦を実施することとなりました。
その恩赦の内容は,国民感情,特に犯罪被害者やその御遺族の心情等に配慮し,(1)政令恩赦として,罰金刑を受け終わった者であって,かつ,3年間再び処罰されていないものについて,刑に処せられたため生じた資格の制限をなくす「復権」を行い,併せて,(2)特別基準恩赦として,一定の基準を定め,これに該当する者について,犯情,本人の性格及び行状,犯罪後の状況,社会の感情等を個別に審査して行う「刑の執行の免除」及び「復権」を実施するというものです。今般実施する恩赦の種類と対象
政令恩赦
特別基準恩赦
【引用元】
なんだか難しく書いてありますね。
まずは、恩赦が何か?ってところからですね。
恩赦とは「百科事典マイペディア」で以下のように説明されています。
元首その他国の最高権威者が国家刑罰権の全部または一部を消滅させること。その目的は画一的な法の適用に伴う欠点を除き,犯人に対し公正妥当な措置を行うこと,事情の変更により処罰する必要がなくなった場合にそれを避け,あるいは国家の慶弔に際し喜びを分かち,または冥福(めいふく)を祈ることとされるが,その乱用は許されない。日本国憲法では内閣がこれを決定し,天皇が認証する(憲法73条7号)。大赦,特赦,減刑,刑の執行免除,復権があり,細部は恩赦法(1947年)に規定。
まだ、難しい感じですが、簡単に言うと、
- 裁判所以外の判断で罪を赦したり罪を軽くしますということですね。
そして、その目的は裁判所だけの判断では常に一緒な判断になり公正妥当とはいえない。罪によっては、事情の変更により処罰の必要がなくなる場合もあるかもしれません。そして、もう一つ、「更生保護」という考え方があるのです。
これは、有罪判決を受けたのち、十分に悔い改め再犯の怖れがない場合もあります。
そのような場合に恩赦により裁判所の判断ではなく行政の判断により罪を許したり軽くできるようにすることで更生の励みになるという考え方です。
しかし現実問題として、更生というのは簡単なことでありません。
以下の動画でも、紹介されていますが、出所しても仕事が見つからず犯罪を繰り返すケースも増えているようです。
更生保護紹介動画「更生保護~立ち直りを支える地域のチカラ~」
【参照元】
そして、恩赦には、以下のような種類があります。
(1) 大赦
有罪の言渡しが確定した者に対し、その効力を失わせ、確定していない者に対し、公訴権を消滅させるもの。大赦を受けた受刑者は釈放され、被告人は免訴判決が言い渡され、被疑者は捜査が終結する。
(2) 特赦
有罪の言渡しが確定した特定の者に対し、その効力を失わせるもの。特赦を受けた受刑者は釈放される。
(3) 減刑
死刑を無期懲役に変更するなど、刑の言渡しが確定した者に対し、その刑を軽くしたり、刑の執行を軽くするもの。執行猶予中の者には猶予期間を短縮可能。
(4) 刑の執行の免除
執行猶予中の者を除き、刑の言渡しが確定した特定の者に対し、刑の執行を将来に向かって全部免除するもの。
(5) 復権
既に刑の執行を終えた者などに対し、有罪の言渡しを受けたために喪失・停止した資格を回復させるもの。選挙違反事件で停止された公民権(選挙権や被選挙権)を回復させるなど。
【引用元】
そして恩赦の対象は以下の2種類になります。
(1) 政令恩赦
政令で恩赦の対象となる罪や刑の種類,基準日等を定めて,その要件に該当する者について一律に行われるもの。
大赦,減刑,復権の3種類があり,実施される恩赦の種類ごとに大赦令,減刑令又は復権令が公布される。
(2) 個別恩赦
有罪の裁判が確定した特定の者について,個別に恩赦を相当とするか否かを中央更生保護審査会(法務省に設置。委員長及び4人の委員で構成)が審査し,相当と判断された者について,内閣が決定し,天皇の認証を受けて行われるもの。
特赦,減刑,刑の執行の免除,復権の4種類がある。
常時いつでも行われるもの(※常時恩赦)と,内閣が一定の基準を設け,一定の期間を限って行われるもの(※特別基準恩赦)がある。【引用元】
今回は、恩赦の種類は、「復権」、対象者は「政令恩赦」と「特別基準恩赦」ということになります。
しかし、恩赦は裁判所が判断した内容を行政が変更してしまうのですから、三権分立に反するという意見もあります。(三権分立については以下の記事を参照してください)
恩赦は、裁判所が判断した刑罰を行政が変更する制度であることから、三権分立に反していると指摘され、慎重に行われてきた。近年は道路交通法や軽犯罪法の違反など、軽微な犯罪に限定する傾向にある。
【参照元】
僕も恩赦の目的を考慮しても、三権分立に反していると思います。
本当に裁判所以外での判断も必要だとか、更生の励みになるというのであれば、いつ実施されるのか、わからないような恩赦ではなく、定期的に行わないとそれこそ公平ではありません。偶々、同じような状態であっても、恩赦の恩恵を受けられる人と受けられない人が出てくるのです。
しかし、現状は、恩赦については憲法で定められている内容なので行政の判断に従うしかありません。